後遺症(後遺障害)の適正な賠償を請求したい方へ

交通事故に遭われた後、治療を受けたにも関わらず後遺症が残ってしまった場合、後遺障害の等級が認定されれば、後遺障害に対する賠償を受けることができます。

しかし、保険会社から賠償金の提示を受けた方からご相談を受けると、提示されている賠償額は、適正な賠償額よりかなり低い金額であることがほとんどです。

「保険会社が計算した金額だから、こういうものだろう。」と疑わずに示談してしまうと、損をしてしまう可能性があります。

保険会社から後遺障害の賠償額の提示を受けた場合には、本当にその金額が適正であるか、一度診断を受けることをお勧めします。

事故による後遺症が残り、後遺障害の認定を受けた場合、次の2つの賠償を受けることができます。

  • 後遺障害慰謝料
  • 逸失利益

ここでは、それぞれについて適正な賠償額の算定方法や、保険会社が提示する賠償額との違いなどについて説明します。

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、後遺症が残ったことによる精神的苦痛に対する金銭的賠償のことを言います。


後遺障害慰謝料の算定方法

後遺障害慰謝料額は、後遺障害等級に従って、次のように定められています。東京などでは「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称:赤本)を用いるのが一般的ですが、大阪では「交通事故損害賠償額算定のしおり」(通称:緑本)に従って算定されるため、若干金額が変わります。

等級 大阪基準(緑本) 東京基準(赤本)
1級 2800万円 2800万円
2級 2400万円 2370万円
3級 2000万円 1990万円
4級 1700万円 1670万円
5級 1400万円 1400万円
6級 1220万円 1180万円
7級 1030万円 1000万円
8級 830万円 830万円
9級 670万円 690万円
10級 530万円 550万円
11級 400万円 420万円
12級 280万円 290万円
13級 180万円 180万円
14級 110万円 110万円


保険会社が提示する後遺障害慰謝料

これに対して、保険会社が提示する後遺障害慰謝料は、自賠責保険の基準か、それより少し高い程度の任意保険会社独自の基準によることが多いです。

任意保険会社の基準は、具体的な内容は明らかにされていませんが、自賠責保険の基準では、後遺障害慰謝料額は次のように定められています。

  改正後 改正前
1級 1,150万円 1,100万円
2級 998万円 958万円
3級 861万円 829万円
4級 737万円 712万円
5級 618万円 599万円
6級 512万円 498万円
7級 419万円 409万円
8級 331万円 324万円
9級 249万円 245万円
10級 190万円 187万円
11級 136万円 135万円
12級 94万円 93万円
13級 57万円 57万円
14級 32万円 32万円

例えば、最も重い等級である1級の場合、大阪基準の適正額は2800万円となっていますが、自賠責保険の基準(改正後)では1150万円ですから、1650万円もの差があることがわかります。

最も軽い等級である14級の場合でも、大阪基準の適正額が110万円であるのに対して、自賠責保険の基準(改正後)では32万円と、約80万円の差があります。

このように、保険会社が提示する後遺障害慰謝料は、適正額より大幅に低いものとなっていることが多いです。


逸失利益

逸失利益とは、後遺症によって労働能力が減少することで、本来であれば将来労働によって得られたはずの利益が失われてしまったことに対する補償を言います。

逸失利益の算定方法

逸失利益は、具体的には次の計算式によって算定されます。

 「一年あたりの基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数」

一年あたりの基礎収入

一年あたりの基礎収入は、事故前の直近1年間の収入をいいます。

基礎収入は、被害者の職業などに応じて、次のように算定します。

給与所得者源泉徴収票に記載される年収額を用います。
自営業者確定申告の額を用います。
確定申告をしていない場合には、領収書や帳簿などで収入額を証明する必要があります。
主婦賃金センサスの女性・全年齢の平均賃金を用います。
パートなどをしている場合、平均賃金額と年収額との高い方の金額を用います。
幼児・学生賃金センサスの男女別・全年齢の平均賃金を用います。
大学生や、大学進学の可能性が高い場合には、大卒の平均賃金額で算定される可能性もあります。


労働能力喪失率

労働能力喪失率とは、後遺症によってどの程度労働能力が失われたかをパーセントで示したものです。

次のように、労働能力喪失率は、後遺障害等級ごとにおよその目安が定められています。

等級 労働能力喪失率
1級 100%
2級 100%
3級 100%
4級 92%
5級 79%
6級 67%
7級 56%
8級 45%
9級 35%
10級 27%
11級 20%
12級 14%
13級 9%
14級 5%

ただし、上記の数字はあくまで目安であり、具体的な仕事への影響の程度によって修正を受けることになります。

例えば、上記の表では12級の労働能力喪失率は14%とされていますが、画家の右手に神経症状等が残ったケースで、後遺障害等級を12級としながら、画家としての能力を失ったとして労働能力喪失率を50%とした裁判例があります。(大阪地判平18.6.16 交民39・3・786)。一方で、顔に大きな傷が残る症状(外貌醜状)で後遺障害等級を12級としながら、実際の労働への影響は限定的であるとして、労働能力喪失率を5%とした裁判例もあります。(東京公判平14.6.18 交民35・3・631)

労働能力喪失期間

労働能力喪失期間とは、後遺症によって労働能力が失われる期間を言います。

社会人の場合、原則として、後遺障害の確定時(症状固定時)から67歳を迎えるまでの期間になります。

例えば、35歳の人が後遺障害を負った場合、労働能力喪失期間は 

67歳-35歳=32年間 となります。

幼児・学生の場合や高齢者の場合は、次のように計算することになります。

幼児・学生の場合67歳-18歳(大学生は22歳 ※1)= 49年(大学生は45年)
※1 大学進学が確実な高校生なども含む
高齢者の場合平均寿命の2分の1
また、一部の軽い後遺障害の場合、将来回復する可能性があるものとして、労働能力喪失期間を3年~10年に制限されることがあります。


ライプニッツ係数

ライプニッツ係数(中間利息控除)とは、将来受け取るはずの金銭を、前倒しで受けとることによる利益を控除するために使う指数です。

逸失利益や介護費用などの賠償は、将来にわたって長期的に発生するものですが、交通事故による損害賠償は、前倒しにして一括で支払われるため、その分の利息を控除した金額が支払われることになります。

令和2年4月1日の民法改正により法定利息が変更されたことに伴い、適用されるライプニッツ係数も変更されることになりました。

そのため、令和2年4月1日より前に発生した交通事故については年利5%のライプニッツ係数が、令和2年4月1日以降に発生した交通事故については年利3%のライプニッツ係数が適用されます。

  ライプニッツ係数   ライプニッツ係数
期間
(年)
令和2年4月1日より前に発生した交通事故 令和2年4月1日以降に発生した交通事故 期間
(年)
令和2年4月1日より前に発生した交通事故 令和2年4月1日以降に発生した交通事故
1 0.952 0.971 21 12.821 15.415
2 1.859 1.913 22 13.163 15.937
3 2.723 2.829 23 13.489 16.444
4 3.546 3.717 24 13.799 16.936
5 4.329 4.58 25 14.094 17.413
6 5.076 5.417 26 14.375 17.877
7 5.786 6.23 27 14.643 18.327
8 6.463 7.02 28 14.898 18.764
9 7.108 7.786 29 15.141 19.188
10 7.722 8.53 30 15.372 19.6
11 8.306 9.253 31 15.593 20
12 8.863 9.954 32 15.803 20.389
13 9.394 10.635 33 16.003 20.766
14 9.899 11.296 34 16.193 21.132
15 10.38 11.938 35 16.374 21.487
16 10.838 12.561 36 16.547 21.832
17 11.274 13.166 37 16.711 22.167
18 11.69 13.754 38 16.868 22.492
19 12.085 14.324 39 17.017 22.808
20 12.462 14.877 40 17.159 23.115

保険会社が提示する逸失利益

保険会社も、労働能力喪失率や労働能力喪失期間をもとに、逸失利益を計算します。

ただし、保険会社は、労働能力喪失率を本来の基準より低めに見積もったり、労働能力喪失期間を67歳までではなく10年間だけと期間制限したりして、逸失利益の金額を適正な額より低く算出していることが多いです。

例えば、私が過去に扱ったある事案では、11級の後遺障害が残った40代の男性について、労働能力喪失率は20%、労働能力喪失期間は20年以上が適正とされました。

しかし、保険会社は当初、労働能力喪失率を10%、労働能力喪失期間を10年と主張していました。

そのため、保険会社が提示していた当初の逸失利益の額は、適正な金額に対して1000万円以上も低い金額になっていました。

後遺症の適正な賠償を受ける為には弁護士にご相談ください

このように、後遺障害が認められたとしても、保険会社は直ちに適正な賠償をしてくれるわけではありません。適正な賠償を受けるためには、適切に交渉をしなければなりません。

例えば、労働能力喪失率を低く見積もられた場合、ご自身の後遺障害の症状と、仕事の内容への影響の程度について、具体的に説明・立証する必要があります。

そのため,保険会社から後遺障害の賠償額の提示を受けた場合には、一度弁護士に相談することをお勧めします。

幣事務所では、交通事故に遭われた被害者の方の初回相談は無料でお受けしております。お困りの方はお気軽にご相談ください。

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