夫婦の一方が死亡し、残された配偶者が被相続人の所有する自宅を相続しなかった場合、自宅を他人に明け渡すこととなります。
しかし、住み慣れた自宅をすぐに出て行かなければならないとすると、精神的にも肉体的にも大きな負担となります。
このような場合、残された配偶者は、配偶者短期居住権を主張することで、一定の期間、その建物に無償で住み続けることができます。
ここでは、配偶者短期居住権の内容や、配偶者短期居住権がどのような場合に認められるかについて説明します。
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配偶者短期居住権の概要
配偶者短期居住権とは、亡くなった方(被相続人)が所有していた建物に居住していた配偶者に、遺産分割が終わるまでの間や、遺言でその建物が他の人に遺贈された場合でも、一定期間、引き続きその建物を無償で使用することができる権利をいいます。
なお、配偶者短期居住権と似た言葉に、「配偶者居住権」がありますが、これとは別の権利です。
配偶者短期居住権が認められる場合
配偶者短期居住権が認められるのは、「被相続人の財産に属した建物に相続開始のときに無償で居住していた場合」です。
具体的には、
➀被相続人の配偶者であること
②被相続人の所有する建物であること
③相続開始の時、その建物に無償で居住していたこと
が必要になります。
➀被相続人の配偶者であること
配偶者短期居住権が認められるのは、被相続人の配偶者(夫/妻)です。
法律婚の配偶者でなければならず、内縁関係や、事実婚の場合には適用されないため注意が必要です。
②被相続人の所有する建物であること
配偶者短期居住権の対象となるのは、被相続人が「所有」していた建物です。
そのため、賃貸の建物に一緒に住んでいたような場合には、配偶者短期居住権は認められません。
ただし、賃貸の建物の場合、配偶者は相続により「賃借人の地位」をすることで、賃借人として自宅に住み続けることが可能となります。
③相続開始の時、その建物に無償で居住していたこと
配偶者短期居住権が認められるためには、相続開始の時(被相続人が亡くなったとき)、その建物に無償で居住していたことが必要です。
「居住」とは、生活の本拠として現に居住していることを言います。
例えば、入院などのために一時的に建物を離れていたとしても、退院後はその建物に帰ることが予定されている場合などは、「居住」していると言え、配偶者短期居住権が認められます。
一方で、居住しておらず、事業に使用していただけの建物などは、対象になりません。
また、被相続人の所有の建物に「居住」していればよく、被相続人と同居していたことは必要とされません。
そのため、例えば、婚姻関係が事実上破綻しており被相続人と別居していたとしても、他の要件を満たせば、配偶者短期居住権が認められます。
配偶者短期居住権の効力
配偶者短期居住権が認められる場合、一定期間、その建物に無償で居住することができます。
無償で居住することができる期間は、次の通りです。
➀その建物について配偶者が遺産分割をする必要がある場合
遺産分割によって建物を取得する人が決まった日
被相続人が死亡した日から6ヶ月を経過する日
のいずれか遅い日まで
② ➀以外の場合(※)
建物を取得した者が、配偶者短期居住権の消滅を申し入れた日から6ヶ月を経過する日まで
※ 相続放棄をした場合や、遺贈や相続分の指定により、その建物について、配偶者の相続分がないものとされた場合など
配偶者短期居住権の期間終了後
配偶者短期居住権の期間が終了しても、相続によって建物自体を取得した場合や、配偶者居住権を取得した場合には、引き続きその建物に居住し続することが可能となります。
このような権利を取得しなかった場合には、配偶者短期居住権の終了に伴い、その建物を取得した人に引き渡すことになります。
よくある質問
相続放棄をした場合でも、配偶者短期居住権によって建物に居住を続けることはできますか。
配偶者短期居住権は、相続放棄をした場合でも認められます。
そのため、相続放棄をした場合でも、配偶者短期居住権の要件を満たせば、一定期間、その建物に無償で居住することができます。
配偶者短期居住権が認められる場合、別の建物に引っ越した後、その建物を人に貸与することはできますか。
配偶者短期居住権が認められる場合でも、その建物を人に貸与するなどして収益を上げることはできません。
最後に
配偶者短期居住権は、配偶者が住み慣れた住居で生活を継続しつつ、今後の生活のための準備期間を得ることができる重要な権利です。対象になる方は積極的に利用を検討されるとよいでしょう。
自宅を相続するのか、配偶者短期居住権により退去までの準備期間を活用して、別の方法で相続するのかなど、事案によって対応が異なるため、相続問題に強い弁護士に相談されることをお勧めします。
当事務所では、相続に関する初回相談は無料でお受けしております。お困りの方はお気軽にご相談ください。