収益不動産(賃貸物件)の相続|評価方法と遺産分割で注意すべきポイントを弁護士が解説

 「父が所有していた賃貸アパートを相続することになったが、いくらの価値として遺産分割すればいいのか分からない」

「兄は賃貸マンションを引き継ぎたいと言っているが、提示された評価額が安すぎる気がする」

「賃貸物件から上がる家賃収入は、相続開始後は誰のものになるのか?」

遺産に賃貸アパートやマンションなどの収益不動産が含まれる場合、自宅の土地・建物とは異なる特有の問題が多数生じます。収益不動産は「住む場所」ではなく「収益を生む資産」であるため、評価方法も分割の考え方も、通常の不動産とは大きく異なります。

そして、収益不動産は一般に高額であるため、評価方法の違いだけで数百万円〜数千万円の差が生じることも珍しくありません。

この記事では、収益不動産の相続で問題になりやすいポイントを、評価方法・遺産分割の進め方・相続開始後の賃料の取扱いに分けて、弁護士の視点から解説します。


1. 収益不動産の相続が複雑になる理由

自宅の土地・建物の相続であれば、「誰が住むか」「売るか残すか」という問題がメインになりますが、収益不動産の相続ではそれに加えて以下のような特有の論点が生じます。

評価方法が複雑

収益不動産は、土地と建物の物理的な価値だけでなく、毎月の賃料収入を生み出す「収益力」も価値の一部です。そのため、路線価や固定資産税評価額だけでは適正な評価ができず、収益性を考慮した評価が必要になります。

相続税評価額と時価の乖離が特に大きい

収益不動産は、相続税の計算上、「貸家建付地」として評価減が適用されるため、相続税評価額が時価を大幅に下回ることがよくあります。この乖離を利用して低い評価額で遺産分割しようとする相続人がいると、紛争の原因になります。

継続的な収入がある

収益不動産は、相続開始後も家賃収入が発生し続けます。この相続開始後の賃料を誰が受け取るのか、遺産分割が完了するまでの賃料の取扱いをどうするのかも、実務上しばしば問題になります。

管理の負担がある

賃貸物件の経営には、入居者対応、修繕、空室対策、確定申告など継続的な管理が必要です。不動産を取得する相続人には経営者としての負担がかかるため、この点も遺産分割の交渉材料になり得ます。


2. 収益不動産の評価方法

収益不動産の「いくらの価値があるか」を判断する方法は、大きく分けて以下の3つがあります。

(1)相続税評価額(路線価ベース)

相続税の申告では、土地は路線価をもとに「貸家建付地」として評価し、建物は固定資産税評価額をもとに「貸家」として評価します。

貸家建付地の評価額は、以下の算式で計算されます。

自用地としての評価額 ×(1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

これにより、自用地の評価額から2〜3割程度の減額がなされるのが一般的です。

しかし、この評価はあくまで相続税を計算するためのものです。実際の市場価格(時価)はこれとは異なり、特に収益性の高い物件では、時価が相続税評価額を大幅に上回ることがあります。

(2)不動産業者の査定

不動産業者に査定を依頼する方法は、収益不動産でも有効です。

収益物件を専門に扱う不動産業者は、表面利回りや実質利回り(NOI利回り)を基準に、投資家目線での市場価格を見積もってくれます。

たとえば、年間賃料収入が600万円の物件で、市場の期待利回りが8%の場合、査定額は以下のように算出されます。

600万円 ÷ 8% = 7,500万円

これに対して同じ物件の相続税評価額が4,000万円程度であれば、3,500万円もの差が生じることになります。

収益物件を扱う業者に査定を依頼する場合は、居住用物件ではなく投資用物件を専門に扱う業者に依頼することが重要です。居住用物件を主に扱う業者では、収益性を適切に反映した査定が出ない可能性があります。

(3)不動産鑑定士による鑑定評価

不動産鑑定士による鑑定評価では、収益不動産の場合、収益還元法が重要な評価手法として用いられます。

収益還元法には大きく分けて2つの方法があります。

  • 直接還元法:1年間の純収益を還元利回りで割って価格を求める方法です。比較的シンプルで、安定した収益が見込める物件に適しています。
  • DCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法):将来の一定期間にわたる純収益と、期間終了時の売却価格を現在価値に割り引いて合算する方法です。より精緻な評価が可能で、大規模な収益物件の評価に用いられることが多い手法です。

不動産鑑定士は、これらの手法に加えて、取引事例比較法や原価法も併用し、複数の視点から価格を検証した上で最終的な評価額を決定します。

収益不動産の鑑定費用は、物件の規模や複雑さにもよりますが、一般的な賃貸アパート1棟で30万円〜50万円程度が目安です。


3. 遺産分割で注意すべきポイント

(1)「相続税評価額で分割する」は不公平

遺産分割で最も多いトラブルは、収益不動産を取得したい相続人が相続税評価額をそのまま遺産の価値として主張するケースです。

前述のとおり、収益不動産は相続税評価額と時価の乖離が特に大きい資産です。相続税評価額で分割してしまうと、収益不動産を取得する相続人は実際の価値よりもはるかに安い金額で高収益の資産を手に入れることになり、他の相続人にとって著しく不公平な結果となります。

遺産分割においては、原則として時価で評価すべきです。

(2)「収益力」をどう評価に反映するか

同じ築年数、同じ面積の建物であっても、立地や入居率によって収益力は大きく異なります

たとえば、駅前の好立地で入居率95%の物件と、郊外で入居率60%の物件では、建物の物理的な価値が同じでも、収益資産としての価値には大きな差があります。

収益不動産の評価では、以下のような要素が価格に影響します。

  • 現在の賃料収入(満室想定賃料と実際の入居率)
  • 周辺エリアの賃料相場と将来の見通し
  • 建物の築年数、構造、管理状態
  • 大規模修繕の必要性と費用見通し
  • 空室リスク、滞納リスク
  • 立地条件(駅距離、周辺施設、人口動態)

これらの要素を総合的に評価するためには、収益物件に精通した不動産業者の査定や、不動産鑑定士の鑑定評価が不可欠です。

(3)相続開始後の賃料は誰のものか

被相続人が亡くなった後も、収益不動産からは賃料収入が発生し続けます。では、この相続開始後の賃料は誰が受け取る権利があるのでしょうか。

判例(最高裁平成17年9月8日判決)は、遺産分割が完了するまでの間に発生した賃料は、各相続人が法定相続分に応じて取得するとしています。つまり、遺産分割によって最終的に収益不動産を取得した相続人であっても、遺産分割完了前の賃料を独り占めすることはできません。

しかし実務上は、収益不動産の管理を実際に行っている相続人が賃料を受領し、他の相続人に分配していないというケースが多く見られます。このような場合、他の相続人は管理者に対して法定相続分に応じた賃料の引渡しを求めることができます。

遺産分割の交渉においては、不動産の評価額だけでなく、相続開始後の賃料収入の精算も併せて協議することが重要です。

(4)収益不動産を取得する相続人の負担

収益不動産を取得する相続人には、以下のような負担が生じます。

  • 入居者対応や建物の維持管理
  • 空室が生じた場合の賃料減少リスク
  • 大規模修繕や建替えの費用負担
  • 毎年の確定申告(不動産所得の申告)
  • 固定資産税・都市計画税の支払い

これらの負担を考慮して、代償金の額を調整するかどうかは交渉の余地があります。ただし、これらは不動産経営に伴う通常のリスクと費用であり、評価額そのものを大幅に下げる理由にはなりません。


4. 収益不動産が複数ある場合の分割戦略

被相続人が複数の賃貸物件を所有していた場合には、物件ごとに各相続人に割り振るという分割方法も検討できます。

たとえば、賃貸アパートAとBがある場合、長男がアパートAを、次男がアパートBを取得するという形です。この方法であれば、代償金の支払いを最小限に抑えつつ、各相続人が単独で不動産経営を行うことができます。

ただし、物件ごとに収益性や将来性は異なるため、各物件の適正な評価に基づいて公平に割り振る必要があります。一方の物件だけが好条件で他方が不利な条件ということになれば、新たな紛争の火種になりかねません。

また、相続税の面では、小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)の適用可否が物件の割り振り方によって変わる場合があるため、税理士とも連携した検討が必要です。


5. 弁護士に相談すべきケース

収益不動産の相続は、評価方法・賃料の精算・税務・不動産経営の引継ぎなど、法律・税務・不動産の知識が複合的に求められる分野です。

以下のような場合には、早めに弁護士にご相談ください。

  • 他の相続人が相続税評価額や路線価で分割しようとしている
  • 収益不動産を取得したいが、他の相続人から高額な代償金を求められている
  • 相続開始後の賃料を特定の相続人が独占している
  • 複数の収益物件をどう分割すべきか判断がつかない
  • 収益不動産の評価額について相続人間で大きな隔たりがある

弁護士は、不動産鑑定士や税理士と連携し、収益不動産の適正な評価から遺産分割の交渉・調停・審判まで、一貫して対応することができます。


まとめ

収益不動産(賃貸物件)の相続は、自宅の相続とは異なり、収益性を考慮した評価が必要です。相続税評価額と時価の乖離が特に大きい資産であるため、評価方法の選び方次第で各相続人の取り分に数百万円〜数千万円の差が生じます。

また、相続開始後の賃料の帰属や、不動産経営の引継ぎなど、収益不動産ならではの論点も見落とせません。

収益不動産の相続でお悩みの方は、できるだけ早い段階で弁護士にご相談いただくことで、適正な評価に基づく公平な遺産分割を実現することが可能です。


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