【ご相談事例】相続した実家の土地、兄の言う「評価額」は本当に正しい?路線価と市場価格で1,500万円の差が出るケース

📄 ご相談の背景

山田久美子さん(60代・女性・仮名)は、3年前に父・山田正男さん(仮名)が亡くなったことをきっかけに、兄・山田達也さん(仮名)と遺産分割の話し合いを始めました。

遺産は、父が長年暮らしていた自宅の土地・建物と、預貯金約800万円の2つです。

兄の達也さんは、実家の近くに住んでおり、父の晩年は通いで面倒を見ていました。兄は「自分が実家を引き継ぎたい。代わりに代償金を払う」と申し出てくれましたが、提示された内容は以下のようなものでした。


兄から提示された分割案:

遺産兄の主張する評価額
自宅の土地(約180㎡)2,500万円(路線価ベース)
自宅の建物(築35年)100万円(固定資産税評価額)
預貯金800万円
遺産総額3,400万円

「遺産総額は3,400万円だから、久美子の法定相続分(2分の1)は1,700万円。預貯金800万円は久美子が取って、残りの代償金900万円を支払う。」


久美子さんは、この提案にどこか引っかかるものを感じていました。

というのも、実家は最寄り駅から徒歩5分の好立地にあり、周辺ではここ数年、再開発に伴いマンションや商業施設の建設が進んでいます。近所の空き地が高値で売れたという話も耳にしていました。

(路線価って、本当にこの土地の「値段」なの?)

(駅前でこれだけ開発が進んでいるのに、2,500万円は安すぎるんじゃ…)

こうした疑問を抱えたまま、「でも兄が言っているんだから正しいのかもしれない」と悩んでいた久美子さん。知人の勧めもあり、意を決して当事務所にご相談に来られました。


💬 ご質問と弁護士の回答

質問1:「兄は路線価で土地を2,500万円と言っていますが、路線価で分割するのは正しいのでしょうか?」

回答:

路線価は、相続税を計算するために国税庁が定めた基準であり、実際の不動産の市場価格(時価)とは異なります。

路線価は一般的に公示地価の約80%程度に設定されており、実際に売却した場合の価格よりも低くなる傾向があります。

遺産分割においては、不動産は原則として「時価」(実際の市場価格)で評価するのが正しい考え方です。路線価は「税金を計算するための数字」であって、「遺産の値段」ではありません。

したがって、路線価2,500万円をそのまま遺産の価値として分割するのは適切ではない可能性が高いです。

質問2:「実際の時価を調べるにはどうすればよいのでしょうか?費用はかかりますか?」

回答:

時価を調べる方法としては、大きく分けて不動産業者への査定依頼と、不動産鑑定士への鑑定評価依頼の2段階があります。

まず最初のステップとして、不動産業者に査定を依頼するのがお勧めです。不動産業者は、近隣の取引事例や市場動向をもとに、「この不動産がいくらで売れるか」を見積もってくれます。多くの業者は無料で対応してくれますので、2〜3社に依頼して比較するとよいでしょう。

久美子さんのお父様の土地は駅前の好立地で、周辺の再開発も進んでいるとのことですので、路線価よりもかなり高い査定額が出る可能性があります。

査定書を取得した上でお兄様と交渉し、それでも評価額について合意できない場合には、不動産鑑定士に正式な鑑定評価書の作成を依頼することを検討します。鑑定費用は一般的な住宅用地で20万円〜40万円程度ですが、評価額の差によって受け取れる金額が数百万円単位で変わることを考えれば、十分に意味のある投資です。

質問3:「兄が鑑定結果を認めない場合はどうなるのですか?」

回答:

お兄様がこちらの提示する評価額を受け入れず、当事者同士の話し合いでは解決できない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。

調停は、裁判所の調停委員が間に入って話し合いを仲介する手続きです。調停の場では、こちらが取得した査定書や鑑定書を証拠として提出し、路線価ではなく時価で評価すべきであることを主張します。

調停でも合意に至らない場合は、自動的に審判に移行し、裁判所が分割方法を決定します。審判では、裁判所が選任した不動産鑑定士による鑑定が行われることもあり、その鑑定結果が事実上の決定的な判断材料となります。

大切なのは、交渉の段階からしっかりとした根拠(査定書・鑑定書)を準備しておくことです。弁護士が早い段階から関与することで、調停・審判に移行した場合にも一貫した主張ができるようになります。


📌 この事例のポイント整理

  • 路線価は相続税の計算のための基準であり、遺産分割における不動産の評価額としてそのまま使うのは適切ではありません。
  • 遺産分割では、原則として「時価」(市場価格)で不動産を評価します。
  • 時価を調べるには、まず不動産業者に査定を依頼し(多くの場合無料)、それでも合意できなければ不動産鑑定士に鑑定を依頼するという段階的な進め方が一般的です。
  • 特に駅前・再開発エリア・商業地などでは、路線価と実際の時価に大きな乖離が生じやすく、適正な評価を行うことで受け取れる金額が大幅に変わる可能性があります。
  • 相手方が評価額を争う場合は、遺産分割調停・審判で裁判所の判断を仰ぐことができます。

📣 弁護士からのアドバイス:「路線価で分ける」は当たり前ではありません

今回の久美子さんのケースでは、実際に不動産業者に査定を依頼したところ、自宅の土地の査定額は約4,000万円という結果が出ました。兄が主張する路線価ベースの2,500万円とは1,500万円もの差があったのです。

この差額は、代償金の額に直結します。

 兄の主張(路線価ベース)査定に基づく評価
土地の評価額2,500万円4,000万円
建物の評価額100万円100万円
預貯金800万円800万円
遺産総額3,400万円4,900万円
久美子さんの取り分(2分の1)1,700万円2,450万円
預貯金受取後の代償金額900万円1,650万円

路線価で分割した場合の代償金は900万円でしたが、適正な時価で評価した場合は1,650万円となり、750万円もの差が生じます。

久美子さんが「おかしい」と感じた直感は、まさに正しかったのです。

相続で不動産の評価額を提示されたとき、「路線価だから正しいはず」「兄が調べたんだから間違いない」と思い込んでしまう方は少なくありません。しかし、路線価で分けることが「当たり前」ではありません

少しでも「安すぎるのでは?」と感じたら、まずは不動産業者の査定を取ってみてください。そして、金額の差が大きい場合や、相手方が納得しない場合には、弁護士にご相談いただくことで、法的な根拠に基づいた交渉が可能になります。


🏢 相続のご相談は、大東法律事務所へ

「他の相続人が提示してきた不動産の金額に納得できない」

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「不動産の適正な評価額を知った上で、公平な遺産分割を実現したい」

こうしたお悩みをお持ちの方は、まずはお気軽にご相談ください。

当事務所では、不動産の評価が争いになるケースについても、不動産鑑定士との連携体制のもと、適正な評価に基づく遺産分割の実現をサポートしております。

初回のご相談は無料です。お電話またはお問い合わせフォームから、お気軽にご連絡ください。

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