遺産分割で不動産の評価額に納得できない場合の対処法

「兄から遺産分割の提案が届いたけれど、不動産の評価額がどうにも安すぎる気がする…」

「相手が提示してきた金額の根拠が分からない。固定資産税の通知書の金額をそのまま使っているようだけれど、本当にそれでいいの?」

相続のご相談の中でも、このような不動産の評価額に対する不信感をきっかけに来所される方は非常に多くいらっしゃいます。

遺産に不動産が含まれる場合、どの金額を「不動産の価値」として採用するかによって、各相続人の取り分が数百万円〜数千万円単位で変わることがあります。にもかかわらず、他の相続人が根拠の乏しい金額を一方的に提示してくるケースは珍しくありません。

この記事では、相手方が提示する不動産の評価額に納得できない場合に、どのように対処すればよいのかを、実務上の流れに沿って弁護士が解説します。


このページの目次

1. 相手方が低い評価額を主張する典型的なパターン

まず、遺産分割の場面で不動産の評価額が問題になるとき、相手方がどのような主張をしてくるのかを知っておきましょう。よくあるパターンは以下のとおりです。

(1)固定資産税評価額をそのまま「遺産の価値」として提示してくる

最も多いパターンです。固定資産税の納税通知書は毎年届くため、相続人にとって最も身近な「不動産の金額」ですが、固定資産税評価額は一般的に公示地価の70%程度に設定されており、実際の市場価格(時価)よりもかなり低い水準です。

不動産を取得したい側の相続人が、この低い金額を使って代償金(不動産を取得しない側に支払う金銭)を少なく見積もろうとするケースがよく見られます。

(2)路線価をそのまま使っている

路線価は相続税の計算のために国税庁が定めた基準であり、公示地価の約80%程度とされています。相続税の申告では路線価を使いますが、遺産分割における不動産の評価は原則として「時価」で行うべきものです。

「相続税で使う金額なんだから正しいはず」と思い込んでいる相続人も多いのですが、路線価と時価は目的が異なる別の数字です。

(3)古い時点の評価額を持ち出している

相続開始(被相続人が亡くなった時点)から数年が経過しているにもかかわらず、亡くなった時点の評価額をそのまま提示してくるケースもあります。

遺産分割における不動産の評価は、原則として「遺産分割を行う時点」の時価で行います。相続開始後に地価が上昇している場合、古い評価額をそのまま使うことは不当に低い評価となります。

(4)収益物件の収益性を無視した評価

賃貸マンションやアパートなどの収益物件は、毎月の賃料収入を生み出す資産です。土地と建物の価格だけでなく、収益性(利回り)を考慮した評価(収益還元法)を行うことで、路線価や固定資産税評価額よりも大幅に高い評価額になることがあります。

しかし、不動産を取得したい側の相続人が、あえて収益性を無視した低い評価額を提示してくるケースがあります。

(5)マイナス要因だけを強調して値下げを主張する

「建物が古いから価値がない」「接道が悪いから売れない」など、不動産のマイナス面だけを強調して、過度に低い評価を主張するパターンもあります。

確かにこれらは評価に影響する要素ですが、一方的にマイナス面だけを取り上げて評価額を下げることは公平ではありません。


2. まず自分でできる確認方法

相手方から不動産の評価額を提示された場合、すぐに弁護士に相談するのがベストですが、その前にご自身でも簡易的な確認をすることが可能です。

(1)固定資産税の納税通知書を確認する

被相続人宛てに届いていた固定資産税の納税通知書には、土地・建物それぞれの固定資産税評価額が記載されています。もし相手方が提示してきた金額がこの固定資産税評価額と同額またはそれに近い金額であれば、「時価よりもかなり低い金額を使っている可能性が高い」と判断できます。

(2)国土交通省「土地総合情報システム」で近隣の取引価格を調べる

国土交通省が運営する「土地総合情報システム」(https://www.land.mlit.go.jp/webland/)では、過去に実際に行われた不動産取引の価格情報を検索することができます。

対象の不動産の近隣で、似たような条件の土地がいくらで取引されているかを調べることで、相手方の提示額が妥当かどうかのおおよその目安を掴むことができます。

(3)不動産ポータルサイトで近隣の売出し価格を確認する

SUUMO、HOME’S、アットホームなどの不動産ポータルサイトで、対象の不動産の近隣で現在売り出されている物件の価格を確認するのも一つの方法です。

ただし、売出し価格はあくまで売主の希望価格であり、実際の成約価格はこれより低くなることが一般的です。あくまで参考程度の情報として活用してください。

(4)複数の不動産業者に査定を依頼する

最も実践的な方法は、不動産業者(不動産仲介会社)に査定を依頼することです。

不動産業者は日常的に売買仲介を行っているため、地域の相場観に基づいた実勢価格を知っています。机上査定であれば数日程度で結果が出ますし、より正確な金額を知りたい場合は訪問査定(現地調査)を依頼することもできます。

多くの不動産業者は無料で査定に対応してくれますので、2〜3社に依頼して比較することで、客観的な時価の目安を把握することができます。

査定結果を書面(査定書)で出してもらえば、遺産分割の交渉において自分の主張の根拠資料として活用することも可能です。


3. 相手方と評価額が折り合わない場合の進め方

ご自身で確認した結果、やはり相手方の提示する評価額が低すぎると感じる場合、あるいは相手方がこちらの提示する金額を受け入れない場合には、以下のような流れで進めていくことになります。

ステップ1:互いの査定書をもとに交渉する

まずは、それぞれが取得した不動産業者の査定書を提示し合い、評価額の根拠を明らかにした上で交渉するのが第一段階です。

相手方が固定資産税評価額や路線価をもとに主張している場合、こちらが不動産業者の査定書を提示するだけで、相手方が評価額の見直しに応じるケースも少なくありません。

ただし、不動産業者の査定はあくまで「意見価格」であり、業者によって査定額に差が出ることがあります。互いに別の業者の査定書を出し合った結果、数百万円〜1,000万円以上の差が生じることも珍しくありません。

ステップ2:不動産鑑定士に鑑定を依頼する

業者査定をもとにした交渉では折り合いがつかない場合、次のステップとして不動産鑑定士に正式な鑑定評価書の作成を依頼することを検討します。

不動産鑑定評価書は、国の定める「不動産鑑定評価基準」に則って作成されるもので、法的な証拠としての信頼性が最も高い時価の根拠です。取引事例比較法、収益還元法、原価法といった複数の評価手法を用いて、個別の不動産の特性を総合的に分析した上で価格が算出されます。

鑑定費用は、一般的な住宅用地で20万円〜40万円程度が相場です。決して安い金額ではありませんが、評価額の違いによって受け取れる金額が数百万円〜数千万円変わり得ることを考えれば、十分に費用対効果のある投資といえます。

ステップ3:遺産分割調停を申し立てる

交渉でも合意に至らない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。

調停は、裁判所の調停委員が間に入って相続人同士の話し合いを仲介する手続きです。調停の場では、それぞれが提出した査定書や鑑定書をもとに、調停委員が評価額について意見を述べてくれることもあります。

ステップ4:調停不成立の場合は審判へ

調停でも合意に至らない場合は、自動的に審判手続きに移行します。

審判では、裁判所が不動産の評価について裁判所選任の不動産鑑定士に鑑定を命じることがあります。裁判所鑑定の結果は、審判における不動産評価の基礎となるため、事実上の決定的な証拠となります。

裁判所鑑定の費用は、原則として申立人が予納しますが、最終的には審判の結果に応じて相続人間で負担を分け合うのが通例です。


4. 評価額の争いで弁護士に依頼するメリット

不動産の評価額をめぐる争いでは、弁護士に依頼することで以下のようなメリットがあります。

(1)相手方の主張の問題点を法的に指摘できる

「固定資産税評価額で分割すべき」「路線価が正しい金額だ」といった相手方の主張に対して、なぜそれが不当なのかを法的根拠を示して反論することができます。感情的な言い合いではなく、法律と裁判例に基づいた主張をすることで、交渉を有利に進めることが可能です。

(2)不動産鑑定士と連携した適正評価の実現

弁護士は、日頃から不動産鑑定士と連携して業務を行っています。事案に適した鑑定士を選定し、鑑定の前提条件(評価の目的や時点など)を適切に設定した上で依頼することで、遺産分割の場面で最も説得力のある鑑定書を取得することができます。

(3)評価額を踏まえた分割案の全体設計

不動産の評価額は、それ単体の問題ではありません。評価額が変われば、代償金の額、他の遺産との調整、場合によっては相続税への影響も変わります。弁護士は、評価額の交渉と同時に、遺産全体の分割方法を総合的に設計し、依頼者にとって最善の結果を目指します。

(4)調停・審判への備え

交渉段階から弁護士が関与することで、仮に交渉が決裂して調停・審判に移行した場合にも、一貫した主張と証拠に基づいて手続きを進めることができます。途中から弁護士に依頼すると、それまでの交渉経緯や証拠の収集状況によっては不利になることもあるため、できるだけ早い段階からのご相談をお勧めします。


5. よくあるご質問

Q1:相手が不動産業者の査定書を出してきましたが、その業者は相手の知り合いです。信用できますか?

不動産業者の査定は、あくまで「意見価格」です。相手方と親しい業者が、依頼者に有利な(低い)査定額を出すことは実務上あり得ます。

こうした場合は、ご自身でも別の不動産業者に査定を依頼し、双方の査定額を比較することが重要です。それでも合意できない場合は、利害関係のない不動産鑑定士による鑑定評価を検討しましょう。

Q2:相手が評価額の話し合いに一切応じてくれません。どうすればよいですか?

相手方が協議に応じない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることで、裁判所の関与のもとで話し合いを進めることができます。

調停は相手方の同意がなくても申し立てることが可能です。調停の場では、調停委員が間に入って双方の言い分を聞き、合意に向けた調整を行ってくれます。

Q3:相続開始から何年も経っていますが、今から評価額を争えますか?

遺産分割協議には法律上の期限(時効)はありません。相続開始から何年経過していても、遺産分割が完了していない限り、ご自身の法定相続分を主張する権利は失われません。

ただし、遺産分割における不動産の評価は「遺産分割を行う時点」の時価で行うのが原則ですので、相続開始時の評価額ではなく、現在の時価が基準になります。

Q4:不動産鑑定を依頼する場合、費用は誰が負担するのですか?

ご自身で鑑定を依頼する場合の費用は、原則としてご自身の負担となります。

一方、遺産分割調停・審判で裁判所が鑑定を命じた場合の費用は、申立人が一旦予納しますが、最終的には審判結果に応じて相続人間で按分されるのが一般的です。


まとめ

遺産分割において不動産の評価額に納得できない場合、「おかしい」と感じるその直感は多くの場合正しいものです。

固定資産税評価額や路線価をそのまま遺産の価値として受け入れてしまうと、本来受け取れるはずの金額を大きく下回る結果になりかねません。

対処の流れとしては、まずご自身でも不動産業者に査定を依頼して時価の目安を把握し、それをもとに交渉を行います。それでも合意に至らない場合は不動産鑑定士による鑑定評価を検討し、さらに交渉が難航する場合は調停・審判という法的手続きに進むことになります。

いずれの段階においても、早い時点で弁護士に相談することが、最終的な結果を大きく左右します。


相続のご相談は、大東法律事務所へ

「他の相続人が提示してきた不動産の金額に納得できない」

「固定資産税評価額や路線価で分割すると言われたが、それで正しいのか疑問がある」

「不動産鑑定を依頼すべきかどうか判断がつかない」

こうしたお悩みをお持ちの方は、まずは弁護士にご相談ください。

当事務所では、不動産の評価が争いになるケースについても、不動産鑑定士との連携体制のもと、適正な評価に基づく遺産分割の実現をサポートしております。

初回のご相談は無料です。お電話またはお問い合わせフォームから、お気軽にご連絡ください。

▼お問い合わせはこちら▼


関連ページ

keyboard_arrow_up

0728130595 問い合わせバナー 無料法律相談について